研究概要 |
試料表面のトライボロジー情報は市販のセラミックセンサ(エヌエフ回路設計ブロックAE-900S-WB)および自作したPVDF圧電フィルムを用いた柔軟センサを手で把持しできるだけ一定圧力と速度で種々の試料表面を走査させることによって測定した。センサからの信号はオシロスコープを経てコンピュータへ転送され信号処理が行われた後ニューラルネットワークにデータを与え材質の判別を行う。測定試料は,アルミニウム板,銅板,天然ゴム,コルク板,上質紙,発泡スチロールの6種類を使用した。 始めに,得られたデータの周波数特性を調べるためFFT処理を行った。結果を見ると,金属材料と非金属材料の間には若干の違いが見られるがアルミニウム板と銅板,非金属材料間での違いを見分けられなかった。 次に,センサによって得られたデータをパルス幅とパルス高さにより分類した。分類結果をニューラルネットワークに与え認識を行った場合,セラミックセンサを用いて得たデータに関しては合計120の試料を見た場合正しく認識されたのは64であり,正解率は53%であった。 また,人間が手で物体をなでる場合,すべりの程度や刺激の頻度,あるいは強さから材質の識別を行っていると考えられる。このことを鑑み次のようなデータ処理を行った。すなわち,得られた信号の刺激の強さを表わす指標として最大振幅をとりパルス最大強さと呼び,信号上の微小振動を刺激パルスの頻度と考えパルスの総数と定義する。さらに,信号の最大値と最小値の中間値を基準電圧として,信号が基準電圧と交差する点の数を交差パルス数と呼びすべりの頻度を表す。信号処理結果をニューラルネットワークに与え材質認識を行った場合,セラミックセンサを用いて得たデータに関しては合計120の試料のうち102の試料が正しく認識され正解率は85%であり、PVDFセンサを用いて得たデータに関しては69の試料が正しく認識され正解率は58%であった。今後,ニューラルネットワークに与えるパラメータを調整・決定し,システムの特性をさらに改善していく予定である。また,現在は市販のニューラルネットワークプログラムを使用しているが,独自にニューラルネットワークプログラムを開発していきたい。
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