研究概要 |
ギガビットレベルの集積度をもつ半導体メモリでは、最小線幅0.2μm程度の金属配線及び多層配線を各層毎に信頼性の高い絶縁膜で被覆し、その表面を平坦化する必要がある。本研究の目的は、サブミクロン以下のスケールの極微細な配線間に選択的にSi酸化膜を成長し、凹凸のある配線表面を完全に自己平坦化できる薄膜形成技術を確立することである。3電極構造の容量結合型プラズマCVD装置において、SiH_4+O_2混合ガスのプラズマ分解に際して、膜成長表面へのイオン照射を抑制し、基板を-100°C以下に冷却することで、幅0.2μm以下の極微細配線間(c-Si,SiO_2,poly Si,Al等)をボイドが発生することなく選択的にSi酸化膜で埋め込むことができ、配線パターン表面を完全に自己平坦化することができた。また、Si_2H_6+O_2混合ガスを用いることで、通常の2電極型の反応装置においても、この表面流動性に富んだ酸化膜堆積が実現できることを見出した。膜堆積後、膜中に残存する結合水素は、酸素プラズマ処理によって除去可能であり、酸素プラズマ処理時のイオン照射を制御することで、膜の絶縁特性を大幅に改善できることが明らかになった。全反射赤外吸収分光法による膜堆積過程のその場観察の結果、SiH_4+O_2プラズマに接する冷却基板(-95°C)上では、ポリシロキセン及びシラノール系の膜形成前駆体が合成され、その表面反応で生じるH_2O分子の一部は膜中に残留し準安定状態のSiO_X:H膜が形成されることが分かった。その後、室温までの温度上昇過程において、膜中H_2O分子はほぼ完全に脱離すると共にSi-O-Siネットワーク形成反応が更に進行して膜中OH結合及びSiH_X結合が大幅に減少することも明らかにした。以上の結果より、高流動性プラズマCVDの実現には、膜成長表面での重合反応速度をプラズマからのイオン照射による重合反応種の分解速度により高めること、及び水素結合によって被覆された成長表面の重要性が示された。
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