研究概要 |
本研究は,高周波磁心損失の極めて小さい板厚10μm以下の極薄Co基アモルファス磁性合金超薄帯を用いて,MHz帯の高周波領域で利用できる薄形のトランスおよびインダクタを開発することを目的として2カ年間実施してきた。 本研究は,(1)薄形のプレーナトランスに適した高周波磁気特性をもつアモルファス超薄帯の作製,(2)磁気素子の解析・設計,(3)磁気素子試作のプロセスの検討等の3つの具体的な課題に分けられる。 (1)については,前年度に引き続き、高周波磁気特性に及ぼす合金組成と熱処理条件についてを検討した。その結果,Crを少量添加したFe-Co-Si-B系で,幅方向磁界中熱処理を施すと,(Fe-Co-Cr)量の増加にともなって,磁区の微細化が進み,(Fe-Co-Cr)_<79>(Si-B)_<21>の試料薄帯で高周波磁心損失がさらに30〜50%程度改善され,世界最小の値を達成する成果を得られた。また,初透磁率は,低周波域の値は低下するものの周波数特性は大幅に改善され、遮断周波数が数MHzにまで伸びる結果が得られるなどの新しい知見が得られた。しかしながら,薄形磁気素子作製のプロセスについては,フォトリソと化学エッチングおよび印刷法による導体コイルを種々試作検討を行ったが,当初の目標としたコイルの高いQ値が得られるには未だ至っておらず,導体コイルの構造および作製法については,さらに検討を重ねる必要があることが分かった。 また,本研究の2カ年の期間中に,代表者・八木が,宮城高専より熊本工業大学に転出し,新しい研究所の建設および設備の据付・立ち上げ等のために,予想以上の長期間に亘って実験研究の中断を余儀なくされたため,本研究の目的は十分達成していない。本研究期間は一応終了するが,本研究の目標とした薄形磁気素子の試作研究を,さらになお1カ年余続け,取りまとめる予定である。
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