研究概要 |
液晶は低電圧,低消費電力の特長を発揮して次世代の大画面,高精細フラット・パネル・ディスプレイとして最も可能性を秘めているキーデバイスである.液晶が他の表示素子の追随を許さないのは,液晶分子自身が誘電率と屈折率の異方性を持っていながら流動性を示すという特異な性質があるためで,これが液晶の表示性能に低電圧・低電力という優れた特長を与えている.しかしながら,最近,表示パネルの観察方向によっては表示が消えてしまうという,視野角の狭さが液晶の欠点として指摘されている.応用分野の拡大に伴い,この課題の克服は今後益々重要になっていくことは明らかである.この狭い視野角の原因は液晶の特徴の一つである屈折率の異方性である. ところで,これまで申請者らは表示容量の飛躍的な拡大が期待される電界制御型複屈折性液晶表示素子に着目し,この実現に向け積極的な研究を続けてきた.これには分子配向制御と視角依存性の克服の2つの主な課題がある.本研究では,これらの課題を克服するため,申請者らが新たに開発した技術と概念を利用して,極めて広い視野角を有する新しい二層式電界制御型複屈折性液晶表示素子(DECB)を設計試作し,実用の可能性について明らかにすることを目的とし,検討した.実際には,液晶素子内部の分子配向状態を弾性理論で,電気光学的特性を4×4マトリクス法で求める手法を確立した.シミュレーションにより方位角を変えても液晶パネルの表示特性は変わらないことが確認された.また,素子の作製を試みた.液晶には誘電率異方性の大きなものを用い,しきい電圧の低減化を試み,約1Vのものが得られた.さらに電気光学的特性の測定により,積層した液晶素子の補償効果はしきい電圧直後から起き始め,しきい値の少なくとも3倍までは有効であるとこが確認された.
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