金属材料中の合金元素を原子レベルの空間分解能をもって三次元マップとして表示し、かつその任意の超微細領域の定量分析を行なうことのできるユニークな分析装置である三次元アトムプローブFIMを試作し、その性能を評価した。同時にリフレクトロンタイプの飛行時間型アトムプローブFIMを試作し、これらを合体させた複合型ナノ材料解析装置として稼働させ、幾つかの金属材料の超微細領域解析を試みた。本年度は昨年度完成させたリフレクトロン型飛行時間型アトムプローブの鏡体に位置敏感型検出器を取り付け、さらに三次元アトムプローブとして作動させるためのエレクトロニクスならびにソフトウエアーの開発を行った。標準試料を用いて装置の性能評価を行った後、この装置を直ちにCo-Cr磁性薄膜やFe-Zr-Bナノ結晶材料の微細構造解析に応用し、微細構造に関する多くの重要な知見を得た。特にCo-Cr合金薄膜の解析においてはナノメーターレベルの強磁性相の形態を三次元的に可視化し、さらにその部分の濃度を定量的に解析することに成功し、Co-Cr薄膜成長過程における微細組織形成のメカニズムを明らかにした。またFe-Zr-Bナノ結晶磁材料においては非晶質相の結晶化により溶質原子が異相間に分配される様子を定量的に解析し、ナノ結晶形成のメカニズムを解明した。さらに巨大磁気抵抗をしめすグラニュラー型Cr-Fe合金の微細組織を解析し、これにより、磁気抵抗発現のメカニズムを解明した。現在この装置を用いてさらに多くの実用金属材料のナノレベルでの微細組織解析を進めている。
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