研究課題
試験研究(B)
本研究では、開発が急がれている高比強度Al-Li系合金を、従来とは全く異なる新しい方法である溶融塩電解により、高品質かつ低コストで直接製造するプロセスの確立を目的とする。平成6年度は、Al-Li系合金の溶融塩電解製造においてLi_2CO_3をリチウム原料とする研究を行なった平成5年度の成果を引き継ぎ、主としてアノード電極反応の解明に重点を置いた。Li_2CO_3はLiClより遥かに低コストで、吸湿性がなく取り扱い易い。また炭素質アノード発生ガスは処理困難なCl_2でなくCO_2/COで、かつ電解電圧の大幅低下が実現される。しかし、ここで発生ガスがCO_2であるかCOであるかが問題となる。後者は有害、かつ前者の4倍の炭素を消費する。そこでアノード電極反応の解明および生成ガスの組成分析を中心に研究を行った。先ず、LiCl電解浴を用い、溶融Alをカソード(リチウム析出極)、黒鉛電極をアノードとして、多孔質アルミナるつぼ内のLiCl電解浴中にLi_2CO_3を投入して電解を行ない、Al-Li合金を製造した。この際、電極電位を電流遮断法により測定し、またアノードでの生成ガスの分析および黒鉛電極の重量変化を検討した。尚、リチウム析出の電流効率も決定した。その結果、アノード電位は黒鉛電極近傍へのLi_2CO_3の投入により、LiClの電解(Cl_2発生)電位より1.2V程度(分解電圧の約35%)も低下し、Li_2CO_3の使用が省エネルギーに貢献することが明かとなった。またアノードガスの分析より、発生ガスは大部分がCO_2であり、COガスは2〜4%程度と極めて少なく、炭素消費量もこれに対応して少ないことが明かとなった。なお、リチウム析出の電流効率も90%以上と高く、Li_2CO_3の使用による電流効率の低下は認められなかった。以上の様に、平成6年度においてはLi_2CO_3の使用が、良質なAl-Li合金を大幅な低コスト、かつ低毒性(Cl_2は全く無し、COは極く少量)の排ガスで製造できることが確認された。
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