研究概要 |
現在ダイヤモンド膜の各種合成法が提案されているが,大気中で簡便かつ高速にダイヤモンド膜を堆積させることができる方法として燃焼炎法が注目されている。本研究の第一の目的は,この燃焼プラズマに高周波誘導的にエネルギーを付加してプラズマ状態をさらに励起した場合にどのような効果が基板上のダイヤモンドの膜成長や膜質に現れるか,また基板への高周波電界の影響はどうかを検討することであり,第二の目的はこの試みによってプラズマの効果が認められた場合に,これをダイヤモンド膜の高速成長法の開発へと結びつけることである。 装置の主要部分は,酸素・アセチレン炎を発生させる市販の溶接用トーチ,水冷式銅製基板ホルダー,渦巻き状の水冷銅管から成る高周波印加コイルの組合わせで,13.56MHz,1kWの高周波電源からこのコイルを通して電力を燃焼炎に注入する。基板には銅,モリブデン,シリコンを用い、基板表面は鏡面研磨状態か,ダイヤモンド粉末で傷つけ処理状態にした。基板温度は基板ホルダーに流す冷却水の量を調節して制御し,裏面温度を熱電対を接触させて測定した。基板上の堆積物をX線回折,ラマン分光,SEM観察によって評価した。 最初燃焼炎のみにて最も良質の堆積物が得られる条件を設定し,これに高周波電力を印加した。鏡面研磨基板では,高周波電力の増加とともにダイヤモンド堆積量の増加が認められたが,核発生密度には変化がなかった。傷つけ処理を行うと,Mo基板では高周波電力の注入により基板温度を400℃まで低下させても,良質のダイヤモンドの堆積が確認されたが,注入電力を余り増加させると逆に膜質が低下し,ダイヤモンドに非晶質炭素が混入する。堆積速度は約20μm/hに達した。この効果はCu基板ではそれほど顕著ではなく,また再現性に問題があり詳細な検討を要する。
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