研究課題
本研究者らは、液体急冷法で作成したFe-Zr-B-CuやFe-Hr-B-Cu系のアモルファスリボン材を結晶化させ、ナノ粒径bcc相を、得ることにより、20000以上の高い透磁率と1.5T以上の高い飽和磁化を示す新しいタイプの鉄基高磁束密度軟磁性材料を作り出せることを前年度までの研究により明らかにした。本年度では、成分のさらなる適切比と優れた軟磁性特性発見のための機構をより詳細に検討することを目的として、本研究費で購入した磁歪測定装置を使用して磁歪の合成組成依存性ならびに熱処理温度依存性を詳細に検討した。その結果、Cuを添加しないFe-Zr-B、Fe-Hf-BおよびFe-Nb-B系の3元合金においても磁歪が0となり、透磁率が20000W以上の高い値を示す合金組成と熱処理条件が存在することが明らかになった。Cuを添加していないために、Cuを含む4元系合金に比べて、飽和磁化がより高くなり、1.7Tを上回る値を得ることも出来、従来のケイ素銅板にほぼ匹敵する高い磁化とCo系の零磁歪アモルファス合金に匹敵する高い透磁率を併せもつ新しい軟磁性材料を開発することに成功した。また、本年度は、この合金の磁心特性をも明らかにすることを目指した。しかしながら、本研究費の予算は申請額から大幅に削減されたために、磁心特性を測定できる装置を購入することが出来なかった。このために岩通(株)などを初めとする機器関連会社の測定器を借用しなければならなかったために、系統的且つ詳細なデータを広い周波数域で得ることは出来なかった。この装置は来年本研究の分担者(牧野氏)が所属するアルプス電気(株)で購入することが決まっており、来年度にはこの種のデータを得ることが可能となり、当初本研究が目的とした、高磁束密度、高透磁率、零磁歪、低鉄損を併せもち、しかも液体急冷法により連結したリボン材が容易に得られる合金組成を最終決定できるものと確信している。
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