研究概要 |
表面処理鋼板,塗装鋼板あるいはドライプロセスによる種々のコーディングに対して塗膜下腐食あるいは被膜の劣化の定量的評価法を確立することを目的とし,半導体レーザーを落射式顕微鏡に組み込み,試料表面を観察しながら直径数μmレーザー光束を照射・走査し光音響像を描き,劣化・不良部の位置および2次元的広がりを非破壊的に求めること,および交流インピーダンス法により被膜全体の劣化程度を評価する指標を得ることを試みた. 前年度の研究で試作したMPA装置によって,炭素鋼板およびステンレス鋼板に有機物またはTiNをコーディングした試料について,人工欠陥を付与しまたはアノード分極により劣化を加速し,その劣化過程を追跡した.有機物コーティングでは下地鋼板の耐食性能の差異によってMPAの検出感度が異なることが判明した.一方,セラミックスコーティングについては,人工欠陥を起点とする下地鋼板の被膜下での腐食の進行・広がりが確認された.特にMPAの光源に可視光のArレーザーを用いた場合と近赤外光の半導体レーザーを用いた場合では,被膜の光吸収特性の相違によって,腐食生成物の情報と被膜下の腐食状況が別々に測定,評価できることが示された. 個々の欠陥の2次元的な広がりをMPA法によって測定するとともに,被膜全体の劣化状況を交流インピーダンス法によって評価した.特に,コーティング層の剥離が,下地金属との間に大きな空間を生じない(セラミックス等の剛性の大きい被膜の場合)時,劣化部に流入する電流線分布に不均一を生じ,対応する電気的等価回路は電送線回路と呼ばれる分布定数型の回路となることを実験的に確認するとともに,このような系のインピーダンス特性をシミュレートする計算方法を考案した.さらに,実験とシミュレーションの対応から,欠陥が単数の場合または複数であっても劣化が同じ程度であれば,劣化部分の広がりをシミュレーションの定数から推定できることがわかった.
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