研究概要 |
1.はじめに:B2型金属間化合物の耐クリープ特性を示す合金を開発する際、CoTi合金以外に強度の逆温度依存性を示す合金の有無を調べた。その結果、IVa(Ti,Zr,Hf)-VIII(Fe,Co,Ni)族元素B2型金属間化合物、CoZrおよびCoHf多結晶体に就いて強度の逆温度依存性が発現すること、更にすべり系が{110}<001>であるCoTi単結晶の強度の逆温度依存性の発現は転位芯の構造に由来すること等を明かにして来た。本実験では、クリープ挙動を調べる際、重要な基礎的情報であるCoZrおよびCoHf多結晶のすべり面、すべり方向を電子顕微鏡の傾斜実験によって明らかにしたので報告する。 2.実験方法:CoZr,CoHfはそれぞれアーク溶製され、x線回折実験および光顕観察に供された。2×2×5mm^3の大きさに切り出された圧縮試験片はそれぞれ1.4×10^<-4>/sのひずみ速度で変形された。試験温度は液体窒素温度から800℃の範囲で行い、室温以上での圧縮試験は1.3×10^<-3>Paの真空中で行った。電顕観察用薄片は放電加工機を用いて切り出され、ジェット研磨後、電顕観察に供された。変形転位組織観察はJEM-2000EXを用いて行われた。 3.実験結果:x線回折、光顕観察実験の結果、CoZr,CoHfにはぞれぞれ第二相CoZr_2,CoHf_2が僅かに折出していた。CoZrのすべり方向は、従来のg・b=0のバ-ガスベクトル判定条件を用いて調べた結果、強度のピーク温度を越えた広い温度範囲に於て<001>であった。{111}面へのすべり面投影像のトレース解析の結果、CoZrのすべり面は{110}面であった。一方、CoHfに関しては、強度のピーク温度以下の77K,293Kおよび773Kでは転位組織は直線的で特定の方向に配位する傾向がみられた。これらの転位バ-ガスベクトル,b,は<001>タイプであり、<110>および<111>タイプの転位は見られなかった。ピーク温度以上では直線的な転位の配向は見られず多くのループが観察されたが、観察された転位のbは<001>タイプであった。すべり面に関してもCoZrと同様、低温から高温まで{110}であった。<001>転位のウイ-クビーム観察の結果、CoZr,CoHf何れも分解はしていなかった。 4.まとめ:規則化エネルギーの高いIVa-VIII族元素同士の組合せのB2型金属間化合物CoTi,CoZrおよびCoHfのすべり系は低温からピーク温度以上の高温まで{110}<001>であった。これらの結果は、融点まで規則化しているベルソライドタイプあるいはダルトナイトタイプに共通した性質であると思われる。またこれら合金の強度の逆温度依存性の発現機構も<001>転位の芯の構造に由来すると思われる。 これらの結果は、B2型金属間化合物に種々の添加元素を加え、耐クリープ性を示す合金開発に重要な指針をもたらす。
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