前年度までのCr-Al_2O_3による傾斜材料の作製では、最表面がアルミナ層で下層にダクタイルクロム層、中間層としてクロム・アルミナ混合層の3層構造が最も秀れた耐食・耐熱特性を持つことがわかった。しかし、最適条件でも腐食電流密度は2A・m^<-2>であって必ずしも満足されない。このれは最外アルミナ層の多孔性に原因があり、これ以上の耐食性を得るためには封孔処理を行う必要があつた。しかし、アルミナ、クロム以外の第3物質が入ると、溶融アルカリ炭酸塩に対する耐食性やコーティング層間の熱歪特性に変化を生じ、またそれらを新たに吟味する必要が生ずるので、本研究ではクロムを予めメタライジングした上に、低融点金属として金属アルミニウム粉末をアルミナ粉末と混合して溶射し、封孔効果を調べた。溶射膜は炉中で酵素雰囲気中、700℃で金属アルミニウムを酸化し、試料となし、700℃の溶融炭酸塩中で分極実験を行い、腐食電流密度を求め、同時に耐熱評価も行った。アルミニウム-アルミナ混合溶射層の金属アルミニウム成分の濃度をいろいろ変えて最適な混合濃度を求めた。結果は、アルミニウムが5%付近で耐食・耐熱性とも最適値を示した。これはアルミナ細孔に溶融して入ったアルミニウムが酸化されて体積膨張したと考えた体積と細孔の体積とがほゞ一致することがわかり、ほゞ封孔されたためと解釈された。それ以上の混合比では細孔体積以上に体積膨張するため、亀裂を生じ、耐食・耐熱性とも低下したものと考えた。この金属アルミニウム混合比5%の腐食電流密度は約1A・m^<-2>で無封孔のアルミニウム-クロム傾斜膜材料の最適値、2A・m^<-2>の約1/2であり、金属材料の源肉速度に換算して1mm/yearで1年程度の寿命に延びた計算になる。
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