溶融アルカリ炭酸塩燃料電池のウエットシール部材用耐食・耐熱セラミック金属複合材としてプラズマ溶射法による鉄基材上へのアルミナコーティングを行った。鉄基材上にダクタイルクロムをメタライジングすると、耐食・耐熱性とも優れていることがわかったが、クロム層とアルミナ層の二重層構造ではとりわけ熱歪特性に弱点が見られた。そこでクロムとアルミナの傾斜膜の作製を行った。熱歪特性については向上するものの、腐食電流値は返って増加した。これは表面近傍に分布するCrが溶解するためであった。このことから、最表面はAl_2O_3層とし、下層にCrメタライジング層、そして中間層にCr-Al_2O_3混合層の三層構造とし、中間層の混合組成を変えて、最適条件を求めると、8vol%付近に最適値を見出した。この組成はアルミナ層の多孔率とほゞ一致し、丁度細孔を埋め合わせる濃度であることがわかった。本最適値で腐食電流密度は約2A・m^<-2>で寿命は5か月程度と推定した。さらに腐食電流密度を下げるためには、最外アルミナ層の多孔率を低下させる必要があった。本実験では、その一つの方法として、低融点粉体の混合溶射を取り上げたが、その中でも、異物質を混合しない方法としてアルミニウム粉末との混合溶射し、酸化処理して最終的にアルミナに変化させる方法を試みた。Al/Al_2O_3混合比を変化させ、最適値を求めたところ、やはり、Al原子比5%程度に最適値が現れた。これはAlが全てAl_2O_3に変化したと仮定して計算すると、体積比8%に当り、これもほゞアルミナ層の多孔率に一致し、細孔がAl_2O_3によって埋め合わされたものと考えられた。この時の腐食電流密度は約1A・m^<-2>で、Al_2O_3/Cr・Al_2O_3/Crの傾斜膜の約半分に低下した。この場合の寿命は約1年と推算される。
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