厚膜の密着強度を定量的に評価する手法を確立することを目的とし、昨年度開発した剥離試験を用いて種々の厚膜の密着強度を検討し、以下の成果を得た。 1.剥離試験で得られた剥離中の荷重および剥離長さを用いて、剥離中の剥離強度基準として、限界エネルギ解放率を算定できるアルゴリズムを作製した。そしてコンクリートの表面にエポキシ樹脂ライニングを施した試験片を用いて剥離試験を実施し、その試験結果から限界エネルギ解放率を算定した。算定された限界エネルギ解放率は剥離中、剥離荷重・剥離長さにかかわらず一定値となり、剥離強度基準となる可能性を確認することが出来た。さらにこの値は、昨年度に求めていた限界応力拡大係数と異なり厚膜の弾性係数の影響をも受けない評価基準であることが明かとなった。 2.ステンレス母板にアルミナを溶射した溶射皮膜の密着性評価に本研究で考案した方法を適用した。その際アルミナ皮膜は非常に脆いので補強板をつけて試験した。しかし補強板には依存しない剥離強度が得られ、溶射皮膜の密着強度評価にも適用可能であることが明らかになった。 3.考案した試験方法の実用化にあたって、き裂長さの測定はかなり面倒な作業となる。そこで多少測定精度は落ちるが、き裂長さを測定することなく、荷重と荷重点変位のみから、簡易的に限界エネルギ解放率を算定できるアルゴリズムを作製した。これにより簡易試験装置の開発への道を開くことが出来た。
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