研究概要 |
前年度までの合成実験で得られたウィスカ-の引っ張り強度を分析したところ,同一断面積で比較するとこれまでに報告されているアルミナウィスカ-の値よりも1〜2桁程度も強度が低いことが明らかとなった.この原因について明らかにするため,合成実験をさらに繰り返してウィスカ-の合成量を増やし,X線光電子分光法でウィスカ-表面を組成分析した.その結果,合成したウィスカ-表面にはかなりの量のフッ素成分が残留していることが判明した.つまり,これが合成したウィスカ-の強度の低いことと密接に関係しているものと考えられた.そこで,ウィスカ-中にフッ素が残留できないようなさらに高温でウィスカ-を成長させることのできる合成条件を検討することとした. この目的のため,合成に2段式の電気炉を用いた.その合成方法は,低温部で原料を蒸発させ,高温部で水蒸気と反応させてアルミナウィスカ-を成長させる方式である.その結果,反応管内部をすべて高純度アルミナ材質にすると,ウィスカ-の成長に重要な因子である反応温度,キャリヤガス流量,水蒸気分圧を広範囲に変化させても,ウィスカ-は生成しなくなることが分かった.そこで,不純物としてシリカ,金属鉄またはアルカリ成分を反応系に添加し,合成を試みた.その結果,金属鉄を不純物として添加し,白金を基板に用いると膜状にアルミナの板状晶が,一方,ムライトを基板とするとウィスカ-が生成することが分かった.しかし,生成したウィスカ-は昨年度までに得られたフッ素成分を含んだウィスカ-よりも短く,生成量もごく微量であり,合成条件の最適化が必要であった.
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