研究概要 |
本年度は本試験研究の最終年度に当たり、完成した試作ER装置を用いて種々の電極表面上の薄膜系の測定を行うと同時に、300nm以下の波長領域におけるER測定の可能性を検討した。 1.試作装置を用いて、従来の測定法では得られない以下の新たな知見を得た。 (1)多結晶金電極上に形成した鎖長の異なる末端カルボキシルアルカンチオール自己組織膜を介したチトクロムc,c_3の電子移動反応速度と電子移動距離の相関について、紫外・可視反射分光法(広い周波数範囲においてER応答を複素平面解析する)によって検討した。炭素鎖:2,5,10の末端カルボキシルアルカンチオール自己組織膜系について、チトクロムcの電子移動速度はそれぞれ880,670,72s^<-1>を得た。炭素鎖:2,5,10の自己組織系のトンネル電子移動の距離(d)をそれぞれ0.32,0.80,1.6nm、ν=kT/h=6×10^<12>s^<-1>,do=0.4nm,△G^*=8kJ/molと仮定すると、式:ket^0=ν exp[-β(d-do)]exp(-△G^*/RT)から炭素鎖:2,5,10の自己組織膜系のトンネル係数(β)は、それぞれ0.22,0.15,0.11nm^<-1>と計算され、アルキル鎖長で異なる値を得た。 (2)コバルトポルフィリン(CoP)に4個のルテニウム(Ru)錯体を配位させた複核錯体系について、ER法による測定を行った。複核錯体のERスペクトルはCoPの酸化体と還元体の差吸収スペクトルに似ていること、Co中心のみ吸収を持つ波長で測定したERボルタモグラムも酸化還元波を示すことから、CoPも酸化還元反応をしていることが示唆された。 2光源をキセノンランプから重水素ランプに変換して、波長領域200〜350nmにおいてER測定を行った。ビオロゲン2+/+の酸化還元についてERスペクトルが得られ、短波長領域でもER測定が可能であることが確認できた。
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