研究概要 |
本研究において得られた研究成果は、以下に述べる三点に大別できる。 1.チオフェン-シロール共重合体の合成と物性:構造と諸物性との相関 電子受容性のシロール(シラシクロペンタジエン)環と電子余剰性のチオフェン環との組み合わせからなるチオフェン-シロール共重合体を設計し、チオフェン-シロール-チオフェン骨格をモノマー単位(チオフェン/シロール比2/1)とするコオリゴマーおよびコポリマーの合成に成功した。得られた共重合体は、紫外可視領域における著しい長波長吸収などの特異な光学特性を示した。さらに、チオフェン/シロール比3/1、4/1ポリマーを合成し、構造と諸物性との相関について検討した。シロールの割合が増すにつれて、紫外可視吸収は長波長シフトを示し、また、チオフェンの比が増すにしたがい、高い導電性を示すという傾向が明らかとなった。 2.チオフェン-シクロペンタジエノン コオリゴマーの合成および物性 電子受容性の環であるシクロペンタジエノン環と電子余剰性のチオフェン環との共重合体の合成を試み、そのモデル化合物であるチオフェン-シクロペンタジエノン コオリゴマーの合成に成功した。合成はゼロ価ニッケル錯体によるジイン誘導体とイソシアニドとの分子内環化反応を鍵反応として行った。得られたコオリゴマーは、特異な光学特性、極めて小さいバンドギャップなどの興味深い物性を示した。3.2,5-二官能性シロールの新規合成法の開発 シロール環を主鎖に含む種々のパイ共役高分子の合成に不可欠な2,5-二官能性シロールの一般的合成法の開発を行った。リチウムナフタレニドなどの一電子還元剤を用いたエンド-エンド様式によるジイン類の還元的分子内環化反応という概念的に新しい方法論により、これを達成し、シロール環の2,5位へのリチウム、ハロゲン、スズなどの官能基の導入が初めて可能となった。さらに、興味深い目標化合物であるポリシロールのモデル化合物として、シロール環が二個つながったビシロールの合成にも成功し、構造論的および電子論的に興味深い知見を得た。
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