研究概要 |
本試験研究はパラジウム触媒によりベンゼンのC-H結合を活性化して,これにO_2を反応させフェノールを一段階で合成する新プロセスの開発を目的としており,これまでの研究により,Pd(II)/フェナントロリン/O_2(15atm)/CO(15atm)/180℃の条件でベンゼンを反応させるとフェノールが約16,000%収率(Pd基準)で得られることを見いだした。本年度は反応機構を中心に検討した。まず,^<18>Oを用いて反応を行った結果,フェノール^<-18>Oが生成し,フェノールの酸素原子はO_2からきていることを確認した。また,Pb-Pdの錯体を合成・単離してO_2と反応させると,やはりフェノールが生成することから,本反応はPb-Pdの錯体を経て進行することも明らかになった。この系でフェナントロリンが存在しない場合は,安息香酸が主生成物となり,またCOがない場合はビフェニルが主生成物となる。従ってフェナントロリンとCOの共存がフェノールの選択的合成に不可欠であり,二座配位子のフェナントロリンがPdに配位してキレートを作ることにより,中間錯体を安定化すると共に,COはO_2の一つのO原子を受けとりCO_2として除く役割と(C^<18>OOが生成することから確認),ビフェニルの生成を防ぐ二つの役割をしていることが分った。さらに,生成ガスを分析した結果,フェノール1モルに対してCO_2が約4モル生成していることが明らかになり,このCO_2の生成する副反応を抑制する条件を検討したが,この点は未解決のまま残った。さらにプロパンのC-H活性化条件も調べた。
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