研究概要 |
バイオマス、即ちセルロース、キチン等の炭水化物の加水分解は、食品や生理活性物質などを得る原料として重要である。本研究は、単純な糖脂質がそれらの持つ強固な1,4-グリコシド結合を加水分解することができるという発見に端を発している。本年度は一連の研究の中で、糖脂質の活性発現の究明を目的としている。 炭水化物の分解反応は従前と同様の方法によった。触媒は減炭した単糖類にまたは酒石酸に由来するものを合成し、使用した。 糖とジラウリルアミンとを直接にまたはチアゾリジン環を介して間接的に連結した触媒(それぞれ直接型または間接型)を用いたところ、総じて間接型の触媒の方が活性は高かった。しかしそれよりも触媒の活性は糖の種類に大きく依存することが判った。糖の炭素数が3の場合、合成した触媒は水中においてベシクルを作りにくく、その活性を評価するに至らなかった。しかし炭素数4の糖については、酒石酸を代替物として触媒を合成した結果、安定なベシクルを形成し、加水分解活性も示した。そこで炭素数4〜6の糖の触媒について、糖の立体配置と触媒活性を比較した。その結果2,3-位の水酸基がS,S-トレオ>moso>R,R-トレオの順に活性の低下することが判った。言い換えるとこの部分が触媒の分解活性、基質選択性に関係していることが判明した。特に2-位の水酸基の水素がプロトンとして引き抜かれ、残ったアニオン種が活性種であると推定できた。今後この点を踏まえ、新しい触媒種を設計し、反応に使用する予定である。
|