研究概要 |
一電子移動連鎖型求核置換反応(S_<RN>1)の鍵中間体となるラジカルカルボアニオンESRにより検出し、反応の本質を明らかにするとともに本反応を利用してプロスタグランジンB_1(PGB_1)類縁体のα側鎖への置換基の導入した。本反応を利用することによりこれまで困難であった多くのPGB_1類縁体を高選択的に且つ短行程で合成する方法を確立した。このようにして合成されたPGB_1類縁体の生物活性(殺虫、殺菌除草)を評価した結果、6種類の化合物がウンカ、ハダニ、線虫に対し殺虫性を示すことがわかった。本反応において、非常に安定なラジカル中間体の生成が示唆されたので、安定ラジカルに変換したのちラジカル部のα位に四級不斉炭素を持つ縮環式ニトロキシラジカルを調整し、その結晶構造をX線回折により明らかにできた。本ラセミ体は再結晶することにより自然分晶により、それぞれの光学活性体に分離することができた。この方法はこの種のラジカルの一般合成法になることがわかった。 一方、シクロヘキサノンとアルデヒドからジルコノセン触媒を用いることにより、合成が困難であった2,6-ジアルキルフェノールを一般で合成する方法を開発した。また、触媒としてZrocl_2・nH_2Oが利用可能であることを明らかにした。ここで得られた種々の2,6-ジアルキルフェノールの抗酸化能を測定したところ、市販のフェノール系抗酸化剤と同等またはそれ以上の優れた抗酸化能を持つことが判明した。本触媒反応を脂肪族ケトンとアルデヒドの反応に適用すると縮合環化が起こり、一挙にシクロベンテノン誘導体に導けることがわかった。さらにジルコニウム触媒のカルボンル化合物の活性化を利用することにより、アルデヒド類の選択的二量化反応によるエステル合成が達成された。
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