研究概要 |
本研究では,分離対象物の不斉立体構造を高度に識別可能な機能性高分子素材を適用することにより,光学異性体の高度分離に適合する限外ろ過膜の製膜技術を開発することを目的とし,種々検討を行い以下の結果を得た. 1.アミノ酸固定化膜 不斉源としてL-フェニルグリシンを選び,グルタルアルデヒドとの反応により得られる縮合物をポリスルホンとともに湿式法により製膜し,アミノ酸固定化膜を得た.製膜条件を種々検討したところ,製膜条件により分離係数が大きく変化することが明かとなり,溶媒蒸発条件を60℃,65分としたときラセミ体フェニルグリシンの分離係数は9.1であった.また,L-フェニルグリシン固定化膜が,種々の芳香族アミノ酸の光学分割に適用可能であることを見出した. 2.L-メントールプラズマ重合膜 プラズマ重合法により種々の細孔径を有する多孔質酢酸セルロース膜上にL-メントールを固定化した.L-メントール固定化量は,プラズマ照射時間と共に増加するが,膜孔径が0.2μm,0.45μm,0.8μmの酢酸セルロース膜を用いた場合,それぞれ60分,75分,150分以降では固定化率があまり増加せず,その場合の純水透過係数が膜細孔径の2乗に比例することがわかった.また,ラセミ体トリプトファン,フェニルアラニン,チロシンの光学分割を行ったところ,同じ操作圧力ではトリプトファンの分離係数が最も高く,光学分割には立体因子が大きく寄与していることがわかった. 3.テルペン固定化膜 プラズマ重合法により光学活性テルペン類であるL-メントール,S-シトレネロール,R-リモネン,S-ボルネオールを孔径0.2μmの酢酸セルロース膜上に固定化した.プラズマ重合条件を種々変化させ膜を調製したところ,プラズマ照射時間を長くすることにより,テルペン固定化量が増加し,透過流束は減少するものの高い分離係数が得られることが明かとなった.いずれの膜も高いラセミ体アミノ酸光学分割能を示したが,中でもS-シトロネロール固定化膜が最もよい分離係数を示した.
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