研究概要 |
1.正常肝細胞の三次元集塊化(組織化)を誘発するポリウレタンフォーム(PUF)孔内の特殊な培養環境を解析するために、マイクロマニピュレーターを用いてPUF孔内の培養液を採取し高速液体クロマトグラフィーで分析した結果、細胞が自己分泌する分子量500,000以上の高分子物質がPUF孔内へ蓄積していることが確認された。またアルシアンブルーを用いた組織染色法によって、PUF孔内には硫酸基を多く含むプロテオグリカンが蓄積し、組織化した肝細胞集塊の表層にはカルボキシル基を多く含むプロテオグリカンが存在していることが明らかとなった。これらの結果は分子量500,000以上のある種のプロテオグリカンが、三次元化(組織化)誘導因子として肝細胞に作用している可能性を示唆するものである。 2.従来用いてきたポリエーテル系硬質ウレタンフォームの孔径(212±113μm)と材質をいろいろ変え肝細胞のPUFへの初期付着について検討した結果、孔径がより小さく(138±53μm)表面がより親水的な材質のPUFが初期付着が良好であり、またポリエステル系半硬質ウレタンフォームがさらに良い付着率を示した。肝細胞集塊の形成率については、PUFの材質よりもPUF内の細胞密度に依存する傾向が見い出され、機能に与える影響については現在検討中である。 3.PUFを多細管型(径12mm,長さ30mm,細管径1.5mm,ピッチ3mm)に成形し、これを組み込んだ充填層培養装置内でPUFの各孔に肝細胞集塊を形成させこの装置に培養液あるいはホルモン添加血漿を流入させたところ、細胞密度で生体肝の約1/10の高密度が達成され、また尿素合成能では細胞当りで生体肝の約1/2の機能が得られた。ハイブリッド型人工肝臓として応用する際に、生体肝の1/4の細胞量が装置内に入れられれば良いという臨床側の意見を考慮すると、人工肝の装置体積は約2リットルとなり、十分臨床応用が可能であることが示された。
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