ナノメートルサイズの結晶子からなるセラミックス、いわゆるナノセラミックス材料はセラミックス一般の欠点である脆さを克服し高い靭性をもつ事が理論的・実験的に示されている。これまで、耐熱性・耐腐蝕性の高さから大きく期待されたにも関らず、脆さ故の信頼性の低さからなかなか実用化されなかったセラミックス構造材料の本格的な利用を切り拓く為、このようなナノセラミックスの大量生産技術の確立の工学的な意義は大きい。 さて、本研究ではCVD法(気相化学反応法)によってチタニア(酸化チタン)系ナノセラミックス材料の作製を試みた。初年度の研究においてチタニアのCVDに於いて通常用いられているチタンテトライソプポキシドに代わりディビバロイルメタナトディイソプロポキシルチタニウムを用いる事で反応の安定性が増し、制御性が高く成る事が確認された。第二年度は本反応系に対し、ストロンチウム、鉛を添加物として加え、その効果を検討した。その結果、鉛を添加した系では成膜時の二次核発生が抑制される事が見出された。本研究の目的の一つはセラミックス材料の粒径制御であるが、CVD成膜における粒径は通常、二次核密度と成膜速度の割合で決まり、その両因子があらゆる反応条件で変化するため、粒系のコントロールは困難である。しかし、二次核発生が抑えられた系では初期核発生密度が決まると粒子径は膜厚のみで支配される事となる。これは成膜の諸条件を固定し成膜時間だけを変化させる事で膜厚を変化させれば、自動的に粒径をもコントロールできる事を意味しており、CVD法によるセラミックス合成プロセスに於いての粒系制御の手法の一つとして有効であろう。
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