研究課題/領域番号 |
04556009
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研究種目 |
試験研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
応用生物化学・栄養化学
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
北川 泰雄 名古屋大学, 生物分子応答研究センター, 教授 (50101168)
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研究分担者 |
三木 清史 名古屋大学, 生物分子応答研究センター, 助手 (30212228)
上田 正次 雪印乳業株式会社, 生物科学研究所, 主査
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研究期間 (年度) |
1992 – 1993
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キーワード | 分泌性上皮細胞 / 高分子医薬 / 極性分泌 / エリスロポエチン / 糖鎖修飾 |
研究概要 |
動物の体の多くの部分はシート状に連結された細胞層で作られている。この様な構造は皮膚や気管/消化管粘膜だけでなく、血管、リンパ管や分泌腺などの管状構造の構築でも、さらには肝臓や腎臓の構築でも重要な働きをしている。本研究では、表裏極性のある分泌性上皮細胞が管状に並んでホルモンや増殖因子を管腔の内側に放出している分泌組織の構造を人工的に作り、これを新しい高分子医薬の生産系として応用する基礎研究を行った。イヌの腎臓から単離された細胞(MDCK株)を多孔性膜上で培養すると、上皮と同じようなシート状構造を作る。この細胞にエリスロポエチンと呼ばれる赤血球増殖因子の遺伝子を導入したところ、産物は内側にあたる端頂面にだけ選択的に分泌された。エリスロポエチン遺伝子の人工的変異体を作製してこのような極性分泌に寄与しているシグナルを検索したところ、分子内にある3カ所の糖鎖結合部位のうち、第2の糖鎖が重要であることが明らかになった。遺伝子組み換えMDCK細胞が分泌するエリスロポエチンの糖鎖を分析したところ、すでに医薬として試用されているものと同等の構造をもち、正常な造血促進活性を示すことも明らかになった。次に、このような表裏の区別ができる上皮構造を細い管状に成型した多孔性膜(中空糸)の内側に作ることを目的に研究を進めた。小規模のパイロット系作製には成功したが、上皮構造をシールする細胞間の密着結合を広い面積の上皮構造にまで拡張する技術に問題が残された。エリスロポエチン遺伝子の代わりに他の遺伝子を利用して、多様な高分子医療の生産ラインに応用できる可能性についても検討した。以上の成果は、動物培養細胞を用いる有用物質生産の高密度化、低コスト化や製品の安全性などに画期的な改善をもたらす基礎情報として役立つ。
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