異性化糖は澱粉より得たグルコースを固定化キシロースイソメラーゼを用いてフルクトースに変換することにより製造される。このプロセスにおいてフルクトースの生成効率を高め、高品質の異性化糖を安価に製造する必要がある。そのため工業的に直接利用可能な耐熱性キシローズイソメラーゼを作出し、その酵素を利用することによって高フルクトース異性化糖生産システムを開発する研究を行った。高度好熱菌であるThermusthermophilusのキシロースイソメラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列から推定されるアミノ酸配列と既知の放線菌や大陽菌などのイソメラーゼのアミノ酸配列との比較からThermusイソメラーゼの超耐熱性に関与すると推定されるアミノ酸を部位特異的変異誘起法やPCR法によって改変した。それら改変遺伝子を大腸菌の発現系に導入して、改変酵素を生産し、得られた酵素を部分精製してから、その耐熱性などの性質の変化を解析した。その結果、135番目のバリンをアラニンへ、137番目のプロリンをグリシンへ変更したもの、295番目と296番目のグルタミン酸をフェニルアラニンとアスパラギン酸にそれぞれ変更したもの、247番目のアスパラギン酸をグリシンに変更したイソメラーゼは活性や性質に大きな変化は見られなかった。しかし、活性部位の疎水環境を形成している136番目のトリプトファンの近傍の変異では、Mg存在下での熱安定性が激減した。金属結合領域を形成している244番目と254番目のアスパラギン酸の中間に位置している247番目のアスパラギン酸をグリシンに変更した場合には、金属の要求性に大きな変化が生じた。また、本酵素をBacillus brevisの系を用いて大量生産するために、栄養分の自動流加方式による菌体生産法を検討した。さらに本イソメラーゼを含有する菌体を固定化し、グルコースの異性化を行った。
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