研究課題/領域番号 |
04556014
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小田 順一 京都大学, 化学研究所, 教授 (50027041)
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研究分担者 |
田中 琢治 京都大学, 化学研究所, 助手 (40227145)
平竹 潤 京都大学, 化学研究所, 助手 (80199075)
西岡 孝明 京都大学, 化学研究所, 助教授 (80026559)
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キーワード | リパーゼ / 有機溶媒 / 動的速度論的光学分割 / 光学活性シアノヒドリン類 / 固定化リパーゼ / 大量発現 / リパーゼ活性化因子 |
研究概要 |
本年度の研究により、以下のような成果および知見が得られた。 1.有機溶媒中リパーゼせ触媒とする立体選択的エステル交換反応に第2種不斉変換の概念を応用し、種々の置換ベンズアルデヒドから光学活性なシアノヒドリンエステルを100%近い収率で合成する動的速度論的光学分割法を確立し、キラルシントンとして重要な(S)の絶対配置を有する種々のシアノヒドリン類を高い光学および化学収率で合成した。得られた光学活性シアノヒドリンエステルを出発原料として、低毒性でしかも選択性の高いピレスロイド系農薬であるフェンバレレートへと導き、生物活性に必要とされる正しい立体配置を持った立体異性体を92%以上の光学収率で合成することができた。 2.リパーゼが有機溶媒中で高い活性を発現するための固定化方法を工夫し、酵素活性に必須とされる微量の結合水を保持させることにより、有機溶媒中でも最大活性を発揮する固定化リパーゼを作製した。すなわち、糖類が有する水分保持能力を利用しリパーゼの近傍に最適量の結合水を保持させることにより最大活性を発揮させることに成功したばかりでなく、トレハロースやサッカロースなどの二糖類に見られるタンパク質を安定化する作用を応用し、熱や親水性有機溶媒に対する耐性が飛躍的に向上した固定化リパーゼを作製した。 3.大腸菌によるPseudomonasリパーゼの大量発現系の構築。広い基質特異性と高い立体選択性を兼ね備え、合成的価値が最も高いといわれるPseudomonas属由来のリパーゼをクローニングし、大腸菌にて大量発現させる系を確立した。その際、リパーゼ遺伝子の下流に存在する未知の遺伝子産物が、リパーゼタンパク質の巻戻し(refolding)において重要な働きを担っていることをつきとめ、その遺伝子産物の大量発現にも成功した。この未知のタンパク質はリパーゼタンパク質の巻戻しを触媒し、不活性なリパーゼタンパク質を活性型のリパーゼへと変換する。この成果は、大腸菌を用いて活性型のPseudomonasリパーゼを大量生産することにより工業的規模の有機合成におけるリパーゼの利用を可能にするばかりでなく、遺伝子工学的手法によるリパーゼ自身の機能改変にも重要な道を開いた。
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