研究概要 |
リノール酸の過酸化によって得られる過酸化不飽和脂肪酸を結合するホスファチジルコリン過酸化物の合成についてはすでに完成しているので,この方法に従ってアラキドン酸からもホスファチジルコリン過酸化物へと導いた。研究分担者の清水氏によって微生物生産されたアラキドン酸エチルエステルは水酸化リチウムによって加水分解後,リノール酸の場合と同様にしてpH9のホウ酸緩衝液中で酸素ガス存在下、大豆リポキシゲナーゼによって過酸化を行った。この方法によって一度に5〜6グラムの単位で過酸化イコサテトラエン酸を合成することができた。以下,すでに我々の確立した方法によって最も中心となる合成中間体であるヒドロペルオキシ基の保護された純粋な過酸化イコサテトラエン酸を2〜3グラム得ることができた。この酸をリパーゼの利用により合成した光学活性リゾホスファチジルコリンとDCC法によって結合した後ヒドロペルオキシ基の保護基を除去し、精製することによってアラキドン酸から誘導した過酸化リン脂質を初めて合成することができた。この研究過程において問題点となっていた中間体の一つである光学活性1-ステアロイル-2-0-ベンジルグリセロールの光学純度の簡易決定法については,光学活性NMRシフト試薬の存在下、500MHzNMRによる分析で可能であることを明らかにした。また、今回得られた過酸化リン脂質はリノール酸から誘導されたものに比べてかなり不安定であることも明らかとなった。この物質の血管内皮細胞に対する毒性については当初予想されていた毒性が非常に低いのではないかという新事実が研究分担者である松尾氏によって明らかにされつつある。
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