研究概要 |
軟X線と造影剤を利用して,土壌の間隙構造を立体的に観察したり,水と造影剤を交互に流して,土壌中の透水現象を具体的に観測する方法は,岩手大学徳永教授や筆者等の開発した新しい研究手法である。 本年度は,側方照射型軟X線非破壊検査装置を新たに購入することによって,従来の上方照射型の軟X線装置では不可能であったいくつかの実験を行うことができた。その第1は透水現象のリアルタイムでの可視化に関するもので,上下方向に水圧差を与えて,土壌水を流動させながら,横方向から軟X線を照射して,その影像を撮影することによって,従来にない新しい知見が得られた。また,水田土壌中の物質移動の解明にあたって,水稲根あるいは根孔の果たす役割を明確にするために,水稲栽培中の土壌孔隙を観察し,水稲生長中でも根孔が透水に重要な役割を果たすことを明らかにした。この研究でも本年購入した側方照射型の軟X線装置が重要な役割を果たした。 一方,TDR装置は誘電率を測定する装置であるが,土壌の誘電率は土壌の凍結の有無によって大きく変わることを利用し,土壌の凍結の研究にこれを応用することを試みた。現在,北海道深川市において,土壌凍結の実験を実施中であるが,これに利用するための基礎実験とデータ処理のプログラムを開発中である。現在までの検討では,凍結前線の経時的な変化の追跡に大きな力を発揮するものと思われ,従来行われていたメチレンブルー等による凍結深の測定に比較すると,格段に精度の良いデータが得られるものと思われる。 何れにしても,これらの装置は本年購入したところであるが,土壌中の孔隙や透水現象ばかりでなく,様々の物質中の状態を非破壊的に観察できるので,今後の研究の進展に大きく寄与するものと思われる。
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