先端バイオ技術を反芻類家畜へ展開するための開発システムの構築

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04556040
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 舘 隣 東京大学, 農学部, 教授 (30011711)
• 研究分担者: 東條 英昭 東京大学, 農学部, 助教授 (20041668) ; 森 裕司 東京大学, 農学部, 助教授 (40157871) ; 澤崎 徹 東京大学, 農学部, 教授 (00012047) ; 河本 馨 東京大学, 農学部, 教授 (30011894) ; 高橋 迪雄 東京大学, 農学部, 教授 (30011943)
• キーワード: バイオ技術 / 反芻類家畜 / シバヤギ

研究概要

(1)シバヤギのゲノムDNAを鋳型としてPCRによりプライマーを作成した。シバヤギ胎児精巣から得たゲノムDNAをSan 3AIにより酵素処理し、λファージに挿入してライブラリーを構築し、シバヤギSRYプローブを用いてスクリーニングを行った。SRY遺伝子を含む可能性のあるクローンが得られ、その塩基配列決定を行った結果プロモーター領域を含む約1.2kbの領域の塩基配列を決定した。(2)家畜におけるLIF遺伝子の機能を探る基礎研究として、卵巣除去マウスを用いて、プロジェステロン(P)およびエストロジェン(E)の投与実験を行った結果、E単独投与群で、子宮におけるLIF mRNAの発現がE投与後30分後に上昇し、8時間でピークに達し、24時間後に元に値に戻った。また、PとEとの併用投与でもほぼ同様な結果が得られ、子宮でのLIF生産にEが重要な役割を果たしていることが判明した。また、ヒツジのLIF遺伝子の領域をもとに作成したプライマーを用いて、シバヤギ子宮から抽出した全RNAをもとに、RT-PCRにより作成したcDNAから、幾つかの特異クローンが得られ、現在、それらの塩基配列を決定中である。(3)家畜の優性白色形質の遺伝的支配を探る目的で、シバヤギ脳の全RNAを用いて得たRT-PCR産物をもとに、c-kit-遺伝子のクローニングを試みた。得られたDNA断片り塩基配列を決定し、ウシ、ヒト、マウスのc-kit遺伝子と比較したところ、それぞれ95.1%,75.3%,57.3%の相同性を示し、特に、ウシとでは一塩基異なることが判明した。また、このDMA断片は、c-kit遺伝子の細胞外領域をコードしていることが判明した。(4)反芻類家畜の過排卵に対するGhRH(TAP-144-SR)投与の有効性を調べるために、シバヤギ6頭を用いて過排卵実験を行った。GnRH(0日目)、PGF2α(2日目)、FSH(4,5,6日目)、HCG(7日目)の処置が、過排卵誘起に最も有効であることが観察された。(5)家畜未成熟卵胞卵子の有効利用の基礎的研究として、屠体ブタ卵巣からの第一次および第二次卵胞の分離を試みた。コラ-ゲナーゼで酵素処理し、パーコール不連続濃度勾配法により分離した試料中から、さらに卵胞卵子を純度良く分離するのに、コラーゲン吸着ガラスビーズの使用が有効であることが確認された。(6)形質転換牛作出の基礎研究としてウシ屠体卵巣卵子を用いた、体外成熟,対外受精及び体外発育には、体外受精に用いる凍結精液作製時の希釈液の種類ならびに種雄牛が大きく影響することが判明した。DNA顕微注入法による遺伝子導入に際し、胚の移植前にトランスジェニック(Tg)胚を効率良く選別する方法の開発を試みた。その結果、DNA注入後、体外培養した胚を、プロテアーゼK,DpnI,Bcl 31などの酵素を処理する方法が有効であることが判明した。

研究成果

• [文献書誌] S.Tanaka,H.Tojo,C.Tachi: "possibie involvement of amiloride-sensitive Na+/H+ exchanger and/or Na+ transporter systems in hatching" Journal of Reproduction and Development. 39. 97-107 (1993)
• [文献書誌] H.Tojo,S.Matsuzawa A.Takahashi,C.Tachi: "production and characterization of transgenic mice expressing a hGH fusion gene driven by the promoter" Journal of Reproduction and Development. 39. 145-155 (1993)
• [文献書誌] K.Ikeda,M.Nishihar,H.Tojo.M.Takahashi: "Changes of endogenous gromone secretion and onset of puberty in transgenic rats expressing human" Endocrine Journal. 41. 525-529 (1994)
• [文献書誌] H.Ikenaga,I.Mizuta,K.Ono,T.Sawasaki: "placental and plasma cysteine aminoptidase in preqnant animals" Journal of Veterinary Medical sciences.55. 489-490 (1993)
• [文献書誌] S.Tanaka,K.Kasai,T.Sawasaki,C.Tachi: "Melanocytes fail to survive in hair bulbs of the Shiba qoat with dominant black-eyed white phenotyp" pigment Cell Research. 7. 152-157 (1994)
• [文献書誌] H.Nagasawa,K.Yama-moto,T.Mori,H.Tojo: "Normal and neoplastic growth of mammary glands and circulating ievels of prolactih and growth hormone" Zoological Science. 10. 146-152 (1993)
• [文献書誌] T.Nakayama and T.Makino eds: "Evolution of vivipatiry-a view on the hereronomous control of embryogenesis in mammals" Keiseisha,Tokyo, 88pp (1994)
• [文献書誌] H.Mori ed: "Bioloqy of the Germ Line-in Animal and Man" Japan Scientific Societies press TOkyo,Japan, 340pp (1993)