| 研究概要 |
本研究はヒト成長ホルモン(hGH)遺伝子を導入したトランスジェニックラット,及びhGH受容体遺伝子を導入したトランスジェニックラットを作出し,それぞれにおける導入遺伝子の発現,及び表現型の特徴を解析するとともに,両者を交配することにより同一個体でリガンド,及びその受容体をともに発現するラットを作出し,このような手法の大型トランスジェニック動物作出への応用のための方法論を確立しようとするものである。
まず,乳清酸性タンパク質遺伝子プロモーターとhGH遺伝子を連結した遺伝子を導入したトランスジェニックラットを2系統作出することができた。これらは,それぞれ高レベル,及び低レベルのhGHを血中に分泌するもので,各系統で体成長,代謝,性成熟,性周期などに異なる表現型を示した。すなわち,高hGH系統では骨格の伸長,性早熟,偽妊娠様性周期回帰,低hGH系統では肥満,性早熟,不妊などが特徴的であった。さらに,低hGH系統のラットは,高血糖,インスリン抵抗性を示し,糖尿病の有用なモデル動物となることが明かとなった。
一方,ヒト肝臓mRNAよりcDNAライブラリーを作成し,これを用いてhGH受容体遺伝子の単離に成功し,メタルチオネイン遺伝子プロモーターとhGH受容体遺伝子を連結した遺伝子を作成することができた。現在,この遺伝子を受精卵へ注入し,hGH受容体を発現するトランスジェニックラット作出を準備しており,上記のhGH遺伝子を導入したトランスジェニックラットとのハイブリット個体作出,生理機能解析の早急な検討を計画している。
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