研究概要 |
1.アルツハイマー病患者におけるアミロイドβ/A4蛋白前駆体(APP)遺伝子の解析 既に報告したアルツハイマー病(AD)患者におけるAPP遺伝子の発現異常(Knitz型プロテアーゼインヒビターをもつタイプともたないタイプのmRNA比が対照より約1.5倍高くなること)がスプライシング部位の変異によるか否かをPCR-直接シーケンシング法を用いて検討した。その結果,既知の4種のAPP生成に関わる遺伝子部位(第6〜9エクソンおよびイントロンの5′と3′末端およびラリアット形成部位)の共通配列はAD患者において対照と同様に完全に保存されていることを見出し,ADに特異的な変異はないことを明らかにした。 2.アルツハイマー病患者におけるアポリポ蛋白E遺伝子の解析 先年米国でアポリポ蛋白Eの対立遺伝子(アレル)型とアルツハイマー病発症の相関が見出されたことを受けて,日本人のAD孤発例における同アレル型の分布をPCR-RFLP法を用いて調査した。その結果,日本人においても_ε4アレル頻度が晩発型AD患者では25.0%と対照(9.2%)に比して著しく高く,特に_ε4アレルを2つもつ人(ホモ接合体)はすべてAD患者であったことより,このアレルが晩発型AD発症の強力な危険因子であることを示した。 3.アポリポ蛋白E対立遺伝子型とアルツハイマー病患者の脳萎縮の解析 日本人の晩発型AD孤発例において,アポリポ蛋白Eのアレル型と脳の萎縮に相関があるか否かをX線CT画像を用いて解析した。その結果,同アレル型はAD患者における脳全体の萎縮とはほとんど関係がないことが明らかとなった。 4.筋萎縮性側索硬化症の新しい遺伝子変異の発見 上記アルツハイマー病の遺伝子解析の一環として,他の中枢神経系変性疾患の種々の遺伝子異常を調べているが,その過程で家族性筋萎縮性側索硬化症の1家系にこれまで知られていないスーパーオキシドジスムターゼ-1遺伝子のLeu^<106>→Val変異を見出した。
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