研究概要 |
GC-clamped DGGEを用いて、長年に亘り集積されているヒト腫瘍のパラフィン包埋材料からその遺伝子異常を検出する方法を確立した。本年は肝癌、大腸癌、胆道癌、膵癌、粘液産生膵腫瘍についてK-ras p53遺伝子の異常を検討した。方法は、まず30〜40baseのGCclampをつけたPCRprimerによりPCR産物の一側にGCrichの配列を導入した。このPCR産物を0〜80%の変性剤濃度勾配を水平方向に含むゲルで電気泳動を行ったところ、一定の濃度以上でGC-clam以外は、conforma-tion changeを起こすために泳動度が急速にな遅延することが確認された。K-ras遺伝子についてはmutation hot spotであるcodon12,13を含むexon1の範囲を検討した。まず、検出感度を調べるためにcodon12にhomozygous mutationをもつA549細胞を陽性対照とし、正常ヒトgenomic DNAとA549細胞DNAを様々の割合で混合してmutationを調べた。この結果、正常16に対してmutated DNA1の割合で存在する場合でも検出が可能であった。次にパラフィン切片から実体顕微鏡下で腫瘍細胞をくり抜き、DGGE法を用いて検討したところ、大腸癌、肝癌、胆道癌、膵癌、粘液産生膵腫瘍についてそれぞれ40%、0%,56%,91%,100%にmutationが検出された。大腸癌、膵癌などについてはこれまで他の研究室からの報告があるが、今回の結果はその中でも特に頻度の高い方に含まれ、本法の感度の高さが証明された。一方、p53については膵癌と粘液産生膵腫瘍について、hot spotを含むexon5-8の範囲について検討したところ、膵癌の20%に検出できたが、粘液産生膵腫瘍では全く認められなかった。さらに異常を認めたものについてはsequen-cingにより、mutationがexon8に集中していることが明らかになった。膵癌と粘液産生膵腫瘍は臨床的予後が大きく異なる腫瘍であり、今後、症例を重ねてこの点をさらに検討する必要がある。
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