GC-clamped DGGEにより癌関連遺伝子の異常を検出する方法を確立した。この方法は、病理組織切片から実体顕微鏡下でくり抜いた組織についても応用可能である。本年度の研究成果は以下の通りである。 (1)ヒト胆管癌ではK-ras codon 12の変異が約56.2%に検出され、glycineからserineへの変化が多かった。また、胆のう癌でも39.1%にK-rasの変異が検出され、この結果は従来の報告と大きく異なるものであった。 (2)ヒトのう胞性膵癌16例と通常型膵癌20例についてp53と、K-ras codon 12の変異を比較したとろ、K-ras codon 12の変異は両タイプの膵癌でほぼ100%に検出された。一方、p53の変異は通常型膵癌の40%に検出されたが、のう胞型膵癌では全例で検出されなかった。また、膵癌のp53変異は特にexon8に多く見られた。 (3)化学発癌剤で誘発したラット肝腫癌50例では、p53の変異は、全例で検出できなかった。一方、K-ras codon 12の変異は低頻度に検出された。この変異はDENで誘発した肝癌にくらべて、3′-Me-DABまたはaflatoxinB1で誘発した腫瘍でやや多く見られ、発癌剤の種類により頻度が異なることが示唆された。 (4)MNUで誘発したラット乳癌についてp53の変異を検討したところ、変異は全く検出されなかった。 (5)試験管内で自然に不死化したマウス線維芽細胞およびそれらに化学発癌剤処理してtransformした細胞ではp53の変異は検出されなかった。
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