研究概要 |
GC-clamped DGGEを用いて遺伝子異常を検出する方法を確立した。この方法は、長年にわたり集積されているパラフィン包埋材料についても応用可能である。具体的にはまず、30〜40baseのGC-clampをつけたPCRprimerによりPCR産物の一側にGC richの配列を導入する。このPCR産物を0〜80%の変性剤濃度勾配を水平方向に含むゲルで電気泳動すると、一定の濃度以上でGC-clamp以外は、conformation changeを起こすために泳動度が急速に遅延する。変異がある場合にはconformation changeを起こす濃度が正常とは微妙に異なるために違った泳動パターンを示す。また、変性剤濃度勾配と直角方向に泳動することにより同時に多数の試料について調べることもできる。この方法の検出感度を調べるためにk-ras codon 12にhomozygous.mutationをもつA549細胞を陽性対照とし、正常ヒトgenomic DNAとA549細胞DNAを種々の割合で混合したところ、正常16に対してmutated DNA 1の割合で存在する場合でも検出が可能であった。この方法を用いて以下の結果を得た。 (1)ヒト胆管癌、胆のう癌では高頻度にk-ras codon 12の変異が検出され、この変異はglycinからserineへの変化が主であった。 (2)ヒト通常型膵癌とのう胞型を比較したところ、k-ras codon 12の変異はともにほぼ全例に検出されたが,p53の変異は通常型にのみ見られた。 (3)ラット肝癌細胞株ではp53変異は高頻度に検出されたが、肝癌組織では検出されず、したがって、この変異はin vitroで起こったものと考えられた。 (4)ラット肝癌ではk-ras codon 12の変異が検出されたが、その頻度は肝癌を誘発する発癌剤の種類により異なった。 (5)自然不死化マウス線維芽細胞およびそれらを化学発癌剤処理してtransformさせた細胞ではp53変異は検出されなかった。
|