受容体型癌遺伝子c-erbB-2を指標とした診断と治療

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04557019
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 森 茂郎 東京大学, 医科学研究所, 教授 (30010424)
• 研究分担者: 加藤 哲郎 秋田大学, 医, 助教授 (40004642) ; 山本 雅 東京大学, 医科学研究所, 教授 (40134621) ; 秋山 徹 大阪大学, 微研, 助教授 (70150745)
• キーワード: 癌遺伝子 / 乳癌 / 血清診断 / ステロイドホルモン / erbB-2

研究概要

1.乳がん診断における血清ErbB-2蛋白値測定の有用性:
全国8施設の外科、検査部の参加する研究会を組織して、乳癌の診断におけるErbB-2蛋白の有用性について検討した。400例をこえる症例の血清、組織片、組織抽出液、コントロール血清などを、EIA,RIAをもちいて検索した。以下に主要なデータを示す。
1)健康な人の血清中ErbB-2蛋白の値はEIAで4.2+/-0.55ng/ml、RIAでは4.0+/-0.69ng/mlであった。
2)ErbB-2蛋白測定に際してのEIA法とRIA法の値はほぼ完全に相関した。
3)遺伝子の増幅のみられた症例は有意に高い抽出液中のErbB-2蛋白値を示した。
4)乳癌のうち免疫染色が陽性であった症例は46/117例、39.3%であった。
5)同じく遺伝子の増幅がみられた症例は14/56例、25.0%であった。
6)他の腫瘍マーカーとの組み合わせでは、CA15-3,ST439との組み合わせが特に良好であった。
そのほか多角的にデータを解析し、EIAおよびRIAによる本検索が、診断にきわめて有効であり、実用化が可能であることを示した。この結果は現在投稿中であり、また診断薬として健康保険適用を申請中である。
2.ErbB-2を同定する単クローン抗体を新たに数種、共同研究によって開発した。
3.本研究の過程で、特殊な悪性リンパ腫の発生にかかわる新しいキナーゼ蛋白を発見した。現在投稿中である。

研究成果

• [文献書誌] Toyosaki,T.,Sagami,H.ら: "Localization of the viral antigen of feline immunodeficiency virus in the lymph nodes of cats at the early stage of infection." Arch Virol. 131. 335-347 (1993)
• [文献書誌] Iwahashi,T,Okochi,Eら: "Specific targetting and killing activities of anti-P-glyco-protein monoclonal antibody MRK 16 directed against…" Cancer Res. 53. 5475-5482 (1993)
• [文献書誌] Soon HC,Yamanashi Y et al.: "Expression of lyn protein on human malignant lymphomas." Laf Invest.
• [文献書誌] Itoh T,Shiota M et al.: "Engraftment of human non-Hodgkin's lymphomas in mice with severe combined immune deficiency." Cancer. 72. 2686-2694 (1993)
• [文献書誌] Mori,S.: "Demonstration of isolated follicular dendritic cells in lymphatic vessels around human immune deficiency-infected lymph node" Virchows Archiv(A). (印刷中). (1994)
• [文献書誌] Sasajima Y,Yamabe H et al.: "High expression of the Epstein-Barr virus latent proteins EBNA2 on pyothorax-associated lymphomas." Am J Pathol. 143. 1280-1285 (1993)