臓器移植に際し、宿主のTリンパ球が抗原受容体(TCR)を介して移植片の抗原を認識するが、この時リンパ球上の接着分子を介するco-stimulatory signalを抑制するとT細胞はclonal anergyの状態となる。このco-stimulatory signalを与える接着分子であるマウスB7及びJlld抗原の遺伝子クローニングをPCR法にて行った。クローニングした遺伝子の一部塩基配列を決定し、目的とするB7とJlldがクローニングされていることを確認した。次に可溶性B7及びJlld抗原の大量生産系を確立するためにヒトイムノグロブリンFc部分とB7及びJlld抗原の細胞外部分の遺伝子を結合し、キメラ遺伝子を組み込んだベクターを作製した。まず、COS細胞にキメラ分子遺伝子を導入し、無血清培地にて数日間培養し、その培養上清からプロテインAカラムを用いてキメラ接着分子を精製した。精製の純度はSDS-PAGE後蛋白染色にて単一バンドであることを確認した。COS細胞を用いた方法では、遺伝子の発現が一過性であるため、必要に応じて遺伝子導入を行う必要がある。このため、恒常的にB7-及びJlld-Fc分子を産生する細胞株を樹立するために、CHO細胞にキメラ遺伝子を導入し、mRNA高発現株を作製するためメトトレキセート存在中で遺伝子導入細胞を培養し、除々にその量を増量し、B7及びJlld-Fcキメラ分子を恒常的に分泌する2種類の細胞株を樹立した。これらキメラ分子は細胞表面上のcounter-receptorをもつ細胞と結合し、これはFITC標識抗ヒトイムノグロブリンFc抗体で同定することがてきた。
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