単一細胞由来の遺伝子ラブラリーを作製し、固有の遺伝子を単離することを最終目的とした。 1.微量のRNAから出発し、cDNA合成、環状化後、2段階inverse-PCRを行うことが可能であるかをまず検討した。結果として、1ngのtotal RNAから出発してバンドの検出が可能であった。これは細胞約100個に相当する量である。故に、他の方法で、効率を100倍程度上昇させれば単一細胞からでも可能であることがわかった。 2.環状化反応条件の検討 cDNAの両端(プライマー)のリン酸化の有無で環状化反応の効率に10倍程度の差があり、cDNA増幅の効率が上昇した。また温度は14〜16℃が最適であった。しかし、反応液中にPEG、DMSOなどを添加してもその効率に変化はなかった。 3.プライマー検討 PCRプライマーのデザイン:このデザインが非常にクリティカルであることが判明した。特別なコンピューター・プログラム(OLIGO・ver4.0)を用いることにより、ヘアピン構造やSelf-Annealingを防ぐデザインを得ることができるようになった。また、このプログラムを使うことにより、Tm値が高く、自由エネルギーの低いPCRプライマー・ペアを簡単にデザインできるようになり、PCR効率が上昇した。このようにデザインしても、免疫グロブリン遺伝子スパーファミリーと相同性があるために失敗した例もあった。 4.PCR反応条件の検討 PCR反応の特異性を上昇させ、非特異性的反応を減らすため、Hot-スタートや各種detergentを検討したところTriton-X100を添加したHot-の条件が非常に良好であった。 今年度はライブラリー全体の増幅法、ベクターの検討、およびサブトラクション法の検討を行いたい。
|