研究概要 |
本研究の目的は1)抗糸状虫剤ジエチルカルバマジン(DEC)とアイベルメクチン(IVM)の簡便かつ高感度な血中濃度測定法を開発し、2)この方法を利用して糸状虫症の集団治療法として期待されているDEC・IVMの効果的併用法を動物モデルを用いて検討することである。前年度に20μlの血清で血中DEC・IVM濃度が簡便に、正確に、高感度で測定できる方法(抗DEC・IVM抗体を用いたELISA法)を開発したので、本年度はこの方法を用いて下記の1,2の実験を行い、更にDEC・IVM併用の抗糸状虫効果を観察した。 1)抗DEC抗体が認識する化学構造の決定: DECおよびDEC誘導体(13種)とDEC抗体を反応させ、その程度により、DEC抗体が認識する化学構造を解析した。残念ながら使用した誘導体では特定は出来なかった。 2)併用投与されたDECとIVMの動力学: スナネズミにDEC200mg/kg,IVM2mg/kgを同時に投与し、両薬物の血中濃度の推移を測定した。 両薬物とも相手薬物の動物体内での動態に影響を及ぼすことはないことが確認された。 3)DEC・IVM併用療法の効果判定: B.pahangi感染スナネズミへDEC200mg/kg,IVM2mg/kg,DEC200mg/kg+IVM2mg/kgを5日間投与し、その効果を仔虫数の変化と成虫の回収率で判定した。 併用療法は抗仔虫効果ではIVM単独と同じ効果を、抗成虫効果の点ではDEC単独と同じ効果を示した。 一方in vitroでB.pahangi成虫の運動性と仔虫産出力に及ぼすDEC単独(1mg/kg)、IVM単独(10mug/ml)、DEC・IVM併用の効果を観察した結果、下記する興味ある結果を得た。仔虫産出はDECとIVMの相加作用により減少する。DECは殺成虫作用はなく、IVMの殺成虫作用は弱い。しかしDEC・IVM併用により強力な殺成虫作用が発現される。
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