研究概要 |
自己免疫疾患、アレルギーおよび臓器移植など過剰な免疫応答に起因する疾病の制御のために、MHC分子に強い結合性を有するがT細胞を活性化しないペプチドの開発を目的に、どのようなペプチドがHLA分子に結合するのか、動物モデルとしてのHLAトランスジェニックマウスの可能性、疾患感受性を規定するHLA分子の検討を行った。溶連菌M蛋白に対する免疫応答をモデルシステムとしてT細胞の認識するペプチド、HLA分子を解析したところHLA-DP9と結合しT細胞を活性化する部位が7カ所明らかになり、これらのアミノ酸配列より、HLA-DP9に結合するペプチドのモチーフが明らかになった。また、HLAクラスII分子を遺伝子導入したトランスジェニックマウス(Tg)で、導入したHLA分子による末梢での免疫応答および、胸腺での正の選択が観察され、HLA-TgがHLAの機能をin vivoで解析するための有用なモデルになることが示された。疾患の発症に関与するHLA遺伝子をより詳細に同定するために、DNAタイピングのシステムがセットアップされた。HLA-クラスIに関しては、PCR-SSOP法によるHLA-A遺伝子座のDNAタイピングがセットアップされ、いくつかの新しいアリルが同定された。HLA-クラスIIに関しては、HLA-DRB1,DRB3,DRB4,DRB5,DQA1,DQB1,DPA1,DPB1遺伝子座のDNAタイピングがセットアップされた。DNAタイピングにより従来の血清学的なタイピングでは区別できなかったサブタイプの同定が可能となり疾患と相関のあるHLAがより詳細に明らかになった。
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