研究課題
本研究では超音波エネルギーが薬剤による血栓溶解を増強する可能性があることに注目し、冠動脈内血栓に応用しうるカテーテル型超音波振動装置を開発しその臨床応用の可能性を検討することを目的とする。本年度は既存の超音波結石破砕装置(アロカ社SONOPSUS-501)によるステンレス製flexibleホーン振動時のホーンとそのシースの温度上昇を検討した。ホーン先端での音響エネルギーが血栓溶解に必要と考えられるレベル(2mW/cm^2)になるように振動させた場合、予想以上の高熱を発した。これは、組織プラスミノーゲンアクティベーター(t-PA)の効果の減弱、血管壁損傷など本研究の相幹に係わる問題を生ずる。したがってflexi-bleホーンを包むシース内には無菌的な冷却水の閉鎖潅流回路を設ける必要があることが判り、flexibleホーン、シースに加えてその開発に着手した。また、平成5年度に計画していたin vivo実験の準備を開始し、実験系を確立するとともにこれに習熟した。まず、イヌ大腿動脈に局所的に血栓を作成する方法を確立した。すなわち血管を露出して順行性に5Fのシースを挿入し、これよりPTCA用バルーンカテーテルを加工しバルーン長を10mmとしたものを目的部位に到着させ、バルーン膨張後10mmの振幅で30回内膜を擦過し、そのすぐ近位部で血管を1時間結索して血栓を作成した。ついで同部の血管を摘出し血栓の形成を確認した。血栓は内膜を損傷した約20mmの範囲に限局して形成されており内腔を完全に閉塞していた。一部のイヌでは、血栓形成部位の下流に電磁流量計を装着し、血流量が0であることを確認したのち高濃度のt-PAを投与し、血栓の溶解とともに血流が回復することを確認した。一方超音波照射の血栓への作用については破砕片のサイズや、血栓のミクロ、マクロ変化についての検討を進め、上述の方法で作成した血栓と既存の装置を用いて目下データーを収集しているところである。
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