研究概要 |
Valvo-Pumpは従来の埋込型完全人工心臓と比較してさまざまな利点を持つ。すなわち,1)Valvo-Pumpは心臓弁の位置に埋め込まれるので解剖学的適合性に優れている。2)心筋ポンプの貯血槽あるいは壁として利用するので血液接触面が比較的少なく,血栓形成の機会を減少させる。3)Valvo-Pumpは通常行われている人工弁置換と同様の技式で比較的簡単に埋め込まれる。Valvo-Pumpは円筒形のハウジング内に収められたインペラと小型モータで構成される。インペラには外径22mmの5枚羽根のものを用いた。インペラは小型DCブラシレスモータ(外径21.3mm,長さ24.9mm,サマリウムコバルト希土類磁石をロータに使用)に接続した。回転軸まわりのシールには液体用に開発された磁性流体シールを用いた。模擬循環回路を用いた特性試験により,差圧7.7kPa(58mmHg)に対して流量16.1L/minが得られ,差圧18.4kPa(138mmHg)に対して流量5.0L/minが得られた。磁性流体シールは,回転数9000RPMのとき,29.3kPa(220mmHg)以上の耐圧性能が認められた。 実験によって得られたValvo-Pumpのポンプ特性は,左心の置換に対して十分なものである。これによって心臓弁の位置に埋め込み,左心室のポンプ機能を代行する人工心臓の可能性が確認された。大きさは長さ30mm以下,径25mm以下を目指しているが,今回試作したValvo-Pampでは,流出部の径(37mm)および長さ(55mm)については目標が達成されていない。しかし,まだデザイン的に無駄が多いため,今後の改良によって小型化が期待できる。さらに,溶血を考慮したインペラの形状の最適化を行い,ベアリング,シール等の耐久性も考慮に入れて改良を行っていきたい。
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