研究概要 |
研究年度内に達成できたことは次の通りである。1)11C標識ドコサヘキサエノエン酸(11C-DHA)の前駆体としてpurityの高いall-z-1-bromo-3,6,9,12,15,18-heneicosahexaeneの合製法を確立した。2)lithium反応によりradiochemical purityの高い11C-DHAを、合成する手法を確立した。3)静注後の放射活性の全身臓器毎の分布を計測した。脳の分布は、%dose/g tissueに換算すると1%以下であったが、オートラジオグラフィーにより脳の画像化ができることを示した。4)脳脂質を抽出し、放射活性の分布を分析すると脳内放射活性の大部分は燐脂質に由来し、特にphosphatidylethanolamine分画に由来することが判明した。5)11C-DHAの脳への取り込みは、cholinergic agonistの投与により増加することを示した。6)ラット片側中大脳動脈閉塞モデルにおいて、経時的に11C-DHAの脳内取り込みをオートラジオグラフィー法にて検討した。閉塞30分後に既に閉塞側の脳の広い範囲で11C-DHAの取り込みの増加が生じているのを観察できた。7)神経外傷時の早期モニタリングに脂肪酸イメージングを用いることの可能性を考え、当科で開発したfluid percussion modelを用いた、脳循環代謝実験を開始した。 研究年度内に達成できなかった点は以下の通りである。1)11C-DHAの合成過程における前駆産物であるブロモ体の長期安定供給を計るため、いくつかの企業に打診したが商業規模で供給することに対して合意を得られなかった。2)実験環境の制限から今研究年度内に猿などの大型動物を用いた実験に進むことができなかった。しかし、次年度に共同研究を行っている米国NIHの神経科学研究室にてヒトでの脂肪酸イメージングを共同で進める見通しが立ち、その結果を踏まえ次年度以降に上記1)2)をわが国で行うことをめざす考えである。
|