研究課題/領域番号 |
04557065
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
池内 健 京都大学, 生体医療工学研究センター, 教授 (30026223)
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研究分担者 |
岡田 稔 住友金属, 未来技術研究所, 室長
山室 隆夫 京都大学, 医学部, 教授 (00088527)
岡 正典 京都大学, 生体医療工学研究センター, 教授 (20088537)
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キーワード | 人工関節 / チタン合金 / トライボロジー / 耐摩耗性材料 |
研究概要 |
耐摩耗性の表面を有するチタン合金とUHMWPEとの間の摩擦、摩耗特性を測定した。耐摩耗性チタン合金と比較する試料としてSUS316L,Ti-6Al-4V,、バイタリウム、アルミナ、表面窒化したチタン合金を使用した。耐摩耗性チタンに対するUHMWPEの摩耗量はアルミナよりはわずかに劣るものの、バイタリウムとほぼ匹敵し、他の材質の試料よりも優れていた。関節内へのボーンセメントの混入を想定してUHMWPEに代わってPMMAを用いる摩耗試験を行った。Ti-6Al-4Vとβチタン合金を用いた場合には表面に多数の傷が現れ、潤滑液が黒色に変化した。このときには摩耗粉によるアブレシブ摩耗が著しく、PMMAの摩耗量はきわめて多かった。耐摩耗性チタン合金を用いる場合には、この様な急激なアブレシブ摩耗が生じることはなく、PMMAの摩耗量はバイタリウムの場合に近かった。Ti-6Al-4Vの表面を窒化して硬質の表面を形成した場合には、初期には摩耗は少なかったが、その耐摩耗効果は短時間で消失し、その後はTi-6Al-4V単相の場合と同じ耐摩耗特性を示した。これは表面層が数ミクロンと薄いので短時間のうちに摩耗によって消失したためと思われる。以上のような摩擦摩耗試験によって、耐摩耗性チタン合金は、靭性を保ちつつ、それ自身の表面および相手面の摩耗を防止できることが確認された。現在では表面あらさは0.01ミクロン程度であるが、将来それを向上させることに成功すれば、UHMWPEに対してアルミナ以上の耐摩耗性を持たせ得る可能性があると考えられる。また人工股関節のシミュレータ試験を通じて、耐摩耗性チタン合金はUHMWPEのみでなくポリビニルアルコールハイドロゲルなどの人工軟骨に対しても高性能を発揮することを確認した。耐摩耗性チタン合金を人工関節に応用すれば、軽量化が可能なばかりではなく、一体構造にできるので、スペースに余裕が生まれて複雑な構造にすることが容易であり、たとえば人工股関節のステムに人工関節包をとりつけて密封式の人工関節を実現するなどの新しい展開が考えられる。
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