癌細胞特異糖鎖抗原による慢性関節リウマチ患者に対する感作療法

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04557066
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 越智 隆弘 大阪大学, 医学部, 教授 (80112035)
• 研究分担者: 大脇 肇 大阪大学, 医学部, 助手 (60223872) ; 木村 友厚 大阪大学, 医学部, 講師 (80167379)
• キーワード: 慢性関節リウマチ / 癌 / 糖鎖抗原 / 感作療法

研究概要

我々は重症慢性関節リウマチ(RA)患者の破壊関節部骨髄中に癌細胞特有とされる糖鎖抗原dimeric Lex(di‐Lex;III3FucV3FucnLc6)を保有する特異な骨髄球系カスケードが存在し強い組織破壊活性を持つことを見いだした。この異常な骨髄球系細胞を抑制することによって全身的な組織障害が抑えられるのではないかと企画し、糖鎖抗原を用いたRA患者の感作療法を試みた。
抗原は米国ワシントン大学の箱守教授より提供されたヒトの癌細胞に特異的な糖脂質であるdi‐Lex(dimeric fucose構造)、mono‐Lex(monomeric fucose構造)、及びKATO‐III由来の糖蛋白であるTCAを用いた。当初は重症リウマチの治療法と考えていたが、症例を重ねるうちに軽症リチウムにはさらに有効であることを見いだした。
軽症例も含めて全リチマチ患者に対する効果の解析を経過3カ月(3M)と6Mとに行った。有効例は50ng‐TCAでは3M;25/40(63%),6M;20/30(66%)で多くの有効例を認めた。di‐Lexの500ngでは3M;18/28(64%),6M;9/21(43%)でやはり多くの有効例を認めた。これに対し、mono‐Lexの500ngでは3M;0/5(0%)と無効であり糖鎖の有効性に構造特異性があることが解った。尚、生理的食塩水を用いたPlaceboでは3M;3/17(18%)であった。副作用は約15%に認め、皮疹、脱毛、口内炎などで、臨床検査値の変化は認めなかった。
作用機序として最初は異常な骨髄球系細胞を抑えることを意図しており、そのような結果を得てきた。しかし軽症例にも有効であることより検討を広げた。その結果、di‐LexあるいはTCAのもつ糖鎖構造そのものが、異常な免疫反応亢進の最初の段階、特にT細胞の活性化を抑制(正常化)している結果を得た。

研究成果

• [文献書誌] Hayashida,K: "Bone marrow changes in adjuvant-induced and collagen-induced arthritis." Arthritis and Rheumatism. 35. 241-245 (1992)
• [文献書誌] Fujimoto,M: "Fluctuation of interleukin-1 and-6 activity in bone marrow serum in collagen-induceed arthyritis in rats." Biomedical Research. 13. 243-251 (1992)
• [文献書誌] Kaisho,T: "Human bone marrow stromal cell lines from mueloma and rhematoid arthritis that can support murine PRE-B cell grouwth." The Journal of Immunology. 149. 4088-4095 (1992)
• [文献書誌] 越智隆弘: "RA患者に対する糖鎖抗原による感作療法" リウマチ'92. 92. 170-176 (1992)
• [文献書誌] 柏木伸二: "ヒト胃癌細胞、KstoIII由来糖鎖複合体(TCA)が自己リンパ球混合培養反応に与える影響" リウマチ. 32. 206-214 (1992)
• [文献書誌] 冨田哲也: "慢性関節リウマチと骨髄(1)フローサイトメトリーによるRA患者骨髄細胞の解析" 日整形会誌. 66. S1287 (1992)
• [文献書誌] 冨田哲也: "慢性関節リウマチと骨髄(2)骨髄球系細胞の分化機序" 日整形会誌. 66. S1288 (1992)
• [文献書誌] 田辺誠: "慢性関節リウマチ患者骨髄上清中のサトカインの変化" 日整形会誌. 66. S1289 (1992)
• [文献書誌] 柏木伸仁: "フローサイトメトリーによる慢性関節リウマチ患者の骨髄細胞の解析" 炎症. 13. 269-275 (1993)
• [文献書誌] Ochi,T: "Therapeutic Effect of Intradermal Injections with Difucosyl Lactosamine(Dimeric Lex)on Patients with Rheumatoide Arthritis." The Journal of Rheumatology. 20. 2038-2045 (1993)
• [文献書誌] Furumitsu,Y: "Levels of Urinary Polyamines in Patients with Rheumatoid Arthritis." The Journal of Rheumatology. 20. 1661-1665 (1993)
• [文献書誌] Tomita,T: "Phenotypic Characteristics of Bone Marrow Cells in Patients with Rheumatoid Arthritis." The Journal of Rheumatology. 21. 1608-1614 (1994)
• [文献書誌] Tanabe,M: "Remarkable Elevation of Interleukin 6 and Interleukin 8 Levels in the Bone Marrow Serum of Patients with Rheumatoid Arthritis." The Journal of Rheumatology. 21. 830-835 (1994)