生体用高強度ポリビニールアルコール繊維の開発とその定量的機能評価に関する研究

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04557068
• 研究機関: 奈良県立医科大学
• 研究代表者: 三井 宜夫 奈良県立医科大学, 医学部, 助教授 (70145845)
• 研究分担者: 植田 百合人 奈良県立医科大学, 医学部, 助手 (70203453) ; 永田 直彦 ユニチカ(株), 中央研究所, 主任研究員 ; 望月 政嗣 ユニチカ(株), 中央研究所, 主席研究員 ; 筏 義人 京都大学, 生体医療工学研究センター, 教授 (00025909) ; 玉井 進 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (10075088)
• キーワード: ポリビニルアルコール / 生体材料 / 繊維 / 縫合糸

研究概要

平成5年度は高強度ポリビニールアルコール繊維の、主に生体内における評価を行った。
1. 生体内クリープ試験: 生体内にて各種縫合糸に張力を加え、その伸びと結節部での滑りとを定量的に計測した結果、ポリビニルアルコール縫合糸は生体内における高いクリープ強度を示し、また結節部における緩みも最も少なかった。
2. 生体内劣化試験: 単繊維、繊維束、編み糸、結節強度のそれぞれを検討した結果、長期の生体内劣化試験の評価法としては編み糸の結節強度が妥当であると判断した。48週で約50%、75週で約35%の強度劣化が認められた。これは、この繊維を骨固定用の縫合糸または人口腱として用いた場合に望まれる劣化スピードにはぼ一致すると判断された。但しこれに関しては、新生組織の形成スピードとのバランスによって決定されるべきものであるため、今後さらに検討が必要である。
3. 耐摩耗試験(継続): 往復動型の液体環境内摩擦試験デバイスを作製した。詳細なテスト結果は未だ未報告である。
4. 表面改質: 高分子表面にコラーゲンを固定化することによって軟部組織との良好な結合が得られ、また、同じく燐酸基の固定化によって疑似体液中にてハイドロオキシアパタイト様の沈着が確認された。以上の結果より、繊維の表面に生体活性を持たせることが可能となった。

研究成果

• [文献書誌] Tomita N., Tamai S.et.al.: "Biomaterials Lubricated for Minimum Frictional Resistance." Journal of Applied Biomaterials. (in press).
• [文献書誌] Tomita N., Tamai S. et.al.: "Effects of Cross-sectional stress-relaxation on Handling Characteristics of Suture Materials." Bio-Med.Mater.Eng.,. (in press).
• [文献書誌] Tomita N., Tamai S. et al.: "Handling Characteristics of Braided Suture Materials for Tight Tying.21GC03:Journal of Applied Biomaterials" 4. 61-65 (1993)
• [文献書誌] Tomita N., Ikada Y., Tamai S.: "Mechanical designs for artificial tendons and artificial ligaments." Adv. Composite Materials,. 2. 7-16 (1992)
• [文献書誌] Tomita N., Nagata N. et.al.: "Applications of High-Strength Poly(vinyl alcohol)fibre to biomaterials." Advances in Biomaterials. 10. 483-485 (1992)
• [文献書誌] Tomita N., Tamai S.: "A Study on Elongation and Knot Slacking of Various Sutures." Bio-Medical Materials Engineering,. 2(4). 71-77 (1992)