研究課題
当初、生体内で安定であると思われたポリビニルアルコールも長期の埋入試験により強度低下が観察された。編み糸の結節強度にて測定すると、48週で約50%、75週で約35%の強度劣化が認められた。これは、この繊維を骨固定用の縫合糸または人工腱として用いた場合に望まれる劣化スピードにはぼ一致するが、詳細な劣化メカニズムの解明が重要な課題となった。1.生体内クリープ試験:生体内にて各種縫合糸に張力を加えてその伸びを計測した結果、他の縫合しに比べてポリビニルアルコール縫合糸は生体内における高いクリープ強度を示した。2.埋入試料の分析:長期埋入後のポリビニルアルコールの分子量の低下は比較的軽微であり、また、赤外分析、ラマンスペクトルにおいても強い分解を示唆する所見に乏しかった。走査型電子顕微鏡観察で局所的なキンク像がみられたが、外表面の形態は比較的保たれていた。以上のごとく繊維全体の分解所見に乏しいため、局所的選択的な劣化、例えば細胞付着部分の酸化などが原因であると思われた。このため繊維の劣化に伴う分解産物は微量であると想像されるが、この点に関して今後さらに検討が必要である。実用にあたってさらに効果的なデバイスとなるために、さまざまな表面改質を検討した。表面にコラーゲンを固定化することによって軟部組織との良好な結合が得られ、また、同じく燐酸基の固定化によって疑似体液中にてハイドロオキシアパタイト様の沈着が確認された。以上の結果より、繊維の表面に生体活性を持たせることが可能となった。
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