研究概要 |
誰でも容易に操作でき,何処へでも直ぐ一人で持ち運べる小型軽量の電気や動力ポンプのいらない,簡便な携帯用の救急蘇生用手動体外循環システムを開発した。本装置は弾力性シリコンリザバポンプ(容量約120ml)2個、一方向弁(4個),血液灌流抵抗の低い膜型人工肺、経皮穿刺挿入カテーテル、クィクコネクター,これらを接続するチューブからなる。シリコンリザバポンプの自己復元力で、脱血落差がなくても静脈血をリザバ内に脱血できる。2個のシリコンリザバポンプを手で交互に加圧することで送血する。先にシリコンリザバポンプ1個の装置を発表したが,シリコンリザバポンプが1個だと送血の間は脱血できずバイパス血流量が制限されるから,2個を並列に並べることでバイパス血流量を増やせるように改良した。手動式体外循環法の送血能力を生理食塩水を用いて検討した。脱血落差60cmで2個のリザバポンプを用いると,毎分3リットル以上の流量がえられ,落差0cmでも毎分2リットルの流量があり,リザバポンプ1個の装置より明らかに多くの流量がえられた。本法で溶血が生じるか否を新鮮へパリン加牛血で検討した。牛血を2時間静置した群,ローラポンプで2時間灌流した群と比較した。手動式体外循環装置で灌流した血液の遊離血漿ヘモグロビン濃度は,他の二群と比べ統計学上有意の差がなかった。手動式体外循環法は,2時間程度のバイパス時間であれば溶血の心配はないと考えられる。 以上のごとく研究初年度において救急蘇生用手動体外循環装置の基本設計とプロトタイプの試作を行ない,その性能ならびに安全性を確認できた。
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