研究概要 |
研究は当初予定した如く順調に進行し,研究計画調書に記載された項目について種々検討を行なったところ以下の諸点が具体的事実として明らかとなった。1.マウス前核期胚培養において見られる発生停止胚を超微形態学的に観察すると細胞膜や細胞内オルガネラ等には異常は認められないものの,ミトコンドリアが40-200個程度の凝集塊を形成していることが判明した。2.3H-SODの取り込み実験の結果,小量のSODが胚内部に取り込まれることが明らかとなった。3.ThioredoxinおよびSODを培養液に添加することにより2-Cell block現象が解除され,同時にMPF活性も回復することが明らかとなった。4.SOD添加培養で得られたマウス胚盤胞を同系メスにも移植し,産仔を得た。約200匹を生産せしめた場合産仔の形態等に特に異常なく,また継代繁殖を行った場合もその生殖能力,産仔の数,平均体重等に異常を認めなかった。5.子宮内膜内胚移植をマウス胚盤胞およびマウス子宮を用いて行なうと,移植胚当り68%の生存胎仔が得られた。同じ胚移植操作をハムスター胚とマウス子宮の間で行うと,マウス子宮にDeciduomaの形成が認められるものの胚自体の発生は極めて低率で,恐らく抗体を中心とした免疫系により排除されたものと考えられた。6.ヒト胚の子宮内膜内移植用カテーテルの試作品を作成することが出来た。 以上これまでに得られた結果をもとに今後研究計画調書にもとずいて子宮内膜内胚移植によって成立した妊娠においてみられる胚発生の過程と自然に成立した妊娠においてみられるそれとを比較することや,これまでに作成したヒト胚の子宮内膜内移植カテーテルの有用性を確認することや,さらに動物モデルにおける胚培養成績と胚の子宮内膜内移植による妊娠率および産仔の健常性に関する基礎データを得ることを試み,ヒト体外受精胚移植法への応用の実験的根拠を得る。
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