研究課題
本年度は、唾液中および唾液腺組織中の酸性ならびに塩基性線維芽細胞成長因子(aFGF、bFGF)の同定法の確立とそれらの性格づけを目標におこない、次年度以降の患者データ採取に備えた。(1)唾液の採取法:唾液の経時的採取をおこない、日内変動を電気泳動的に確認したが、採取可能でかつ定常的に行えてFGF検出効率のよい時間帯の設定についてはさらに検討の余地がある。(2)唾液の処理と保存:FGFの免疫化学的定量に先立つ遠心(マイクロ遠心機使用)等の前処理操作後に試料は漸次粘度が増し性状変化の起こることをみいだした。この対策として、ろ過後直ちに急速冷凍保存するか、前処理操作にはいること、さらに、唾液試料の濃縮時には変性剤や界面活性剤を共存させることにした。(3)抗FGF抗体の作製:あらたに、粗FGFをヤギに免疫して、両型FGFと反応する抗体を得た。FGFの抗原部位の合成ペプチドによる抗体作製を試みたが、抗体産生効率がわるかったので、再検討している。今年度は、武田薬品よりモノクローナル抗体の提供をうけた。(4)唾液FGFレベルの検量と定性:唾液ならびに唾液腺組織FGFの定量にはELISA法(ELISAマイクロプレートリーダ使用)を利用したが、抗FGFポリクローナル抗体による間接法では5ng/mlの検出限界であった。モノクローナル抗体によるサンドイッチ法ELISAでは、0.1ng/mlの検出感度をえた。ウシ唾液腺組織では3.8n/gの濃度でbFGFが存在することを確認し、免疫組織化学的にも唾液腺細胞組織で証明した(クリーンベンチ、蛍光顕微鏡使用)。しかし、正常人唾液では検出できなかったウェスタンブロット法では、試料の濃縮が必要であることがわかった。(6)FGF定量の臨床応用:臨床検査へのFGF定量の導入は未開拓であるが、試料処理操作が容易におこなわれるかどうかについて検討が必要であることを確認した。
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