研究概要 |
A)単離味細胞を用いた実験:個々のチャネルの分布および特性についてさらに詳細に調べた。1)80pSKチャネルは電位依存性とともにCa依存性を示す。2)40pSKチャネルはATP依存下でのみcAMPによって活動が抑制された。3)電位依存性Naチャネルは細胞膜全体に分布するが,樹状突起部に比較的高密度に存在した。4)A型の電位依存性Kチャネルもまた樹状突起部に集中した。5)20pSカチオン・チャネルは味覚細胞膜全体に均等に分布した。その活性は細胞内Ca濃度に依存して増大し,Caイオンそのものに対しても透過性を示した。以上のことは,塩応答の刺激変換機構に対するカチオン・チャネルの直接的な寄与を示唆する。Kチャネルは受容膜近傍に高密度で存在することから,安定化効果によって味刺激に対する感度保持に役立っていると考えられる。 B)人工膜を用いた実験:パパイン処理によって単離した細胞から遠心分離・超音波処理によって得られた膜分画を,ガラス微小電極先端に形成したアゾレクチン二分子膜中に再構成して,チャネルの記録を行った。1)30%の膜にチャネルの活動が見られた。得られたチャネル活動はほとんどシングル・チャネル記録であった。2)検出されたチャネルは主に85pS,50pS,30pS程度のコンダクタンスに分類され,観察頻度は4:3:2であった。200pSを越えるチャネルも観察された。これらは,単離味細胞で得られたものと比較的近い値を示した。現在,これらの電位依存性,薬物感受性,イオン選択性等を調べることにより,単離味細胞で得られた結果との更に詳細な対応関係を検討中である。
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