研究概要 |
歯科用金属材料によるアレルギー疾患が漸増しつつある昨今,その実態の把握,発症機序の解明および疾患への対策を確立することは,歯科医療関係者にとって極めて緊要と考えられる。我々は,過去3年間,本研究の代表者,井上を代表者として科学研究補助金(総合A)により,金属アレルギーの疫学調査を約1800名のボランティアを対照として行うとともに,それらの結果と口腔内金属との関連性について検討を重ねてきた。同時に100名以上の金属アレルギーの疑いの濃い患者の治療を行ってきた。このような調査,研究,診療に際して,金属感作の有無の判定は,主としてアレルゲンを背部皮膚に貼付するパッチテストによったが,その判定は発赤,丘疹等の肉眼的,主観的判断によらざるを得なかった。そのため陽性反応の判定基準にバラツキが生じたり,陽性反応を見落とす恐れも考えられた。本研究は,パッチテストの陽性反応の皮膚色調の変化を色彩学的に分析するシステム(装置ならびに測色プログラム)を開発することによって,陽性判定の客観性を得るとともに皮膚変色状態の記録を可能にし,また一次刺激反応とアレルギー反応の差異,試薬による色素沈着,絆創膏皮膚炎等との鑑別を容易にすることを目的として開始した。先ず皮膚の微小部位の走査測色が可能で高い測色精度を有し,しかもピーク値ホルダー機構を持つ高速分光光度計,ならびに皮膚の色調変化を偏色方向,偏色量および分光カーブ特性等について分析するためのソフトを開発した。これを用いて,若干名のパッチテスト部を測定し,色差,分光反射率曲線,視感色濃度,CIELAB表色系のL ^*a^*b^*,マンセル表色系の色相,明度,彩度,の9項目について検討を加えた。その結果,パッチテストが陽性の皮膚には色彩学的に特微的な変化が認められたので,その要旨を平成4年度日本補綴歯科学会関東支部学術大会(新潟)において発表した。
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